ばんそこ/夕凪ここあ
ゆうたくん、
空の色なんてクレヨンのあお
たった一色でこと足りたはずなのに
昨日にはそんなことすらできなくなっていた
ゆうたくん、
10才のころの夢はサッカー選手、で
まぶたの裏で夕暮れのおひさまの匂い
思い出をどこまでも駆けてく
右のほっぺに、ばんそこ
そぷらののとうめいなこえ
を失くしてしまった
それから
ゆうたくん、
どんな漢字だったか
夏休みの宿題ドリルを開いても
「お」の「、」ばかりきれいに忘れてる
ゆうたくん、
きっとどこかで
左右の靴を履き間違えない、
そんなどうでもいい答えと引き換えに
ねぇ、
おとななんて、が口癖だったことなんて忘れたまま
わたしたちのあさとよるは
どこまでも反転していく。
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