聖夜ノ絵 〜 異人館にて ? 〜/服部 剛
 
聖堂で民衆達の祈りは
捧げられていた 

祭壇前に俯(うつむ)いて立ち 
開いたバイブルの文字を読む
聖職者の声が 
静かに響いていた 

背後で見守る人々は皆 
影の射す頬で
胸に写真を抱え 

幼い娘は父の顔 
若い妻は夫の顔 
老夫婦は息子の顔 

無数の蝋燭の灯は揺らめき
暗がりの聖堂を朧(おぼろ)に照らす 

遺された者達から 
戦死した者達の魂へ 
沈黙の言葉を語りかける 
民衆達の静かな夜であった 




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