ソクラテスの灯 〜 異人館にて ? 〜/服部 剛
洋館内を歩く旅人の僕は
黒い机上に置かれた
「ソクラテスの灯」という彫刻に
ふと足を止めた
衣の服を身に纏う男が
頭を垂れて
右手にランプの灯をぶら下げながら
歩いている
男の上の白壁には
金の額縁に納まる
きりすとが
茨の冠を頭に巻いて
必死に両手を合わせるマリアと
哀しい瞳を合わせ
肩に食い込む木の十字架を
背負っている
( 孤独とは・・・十字架の如く
( 旅人の肩にもずっしり重い・・・
屈んで下からもう一度
「ソクラテスの灯」を見上げると
頭を垂れて歩み続ける男は
左の胸に柔らかく手をあて
暗闇を打ち破る
信念の瞳で
右手にぶら下げたランプの灯を
じっと見詰めていた
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