真っ白氏/K.SATO
 
本当にもうなにもやっていない日々を寝ていて何も、僕はやっていない。今夜もこれから眠る。チリ・チリ、鎖の絡みあう音。でも、本当にバカで真っ白の、僕だ。黒い雪が、3月の東京にしては珍しく降っていると聞いたが、窓を開けずに冷たい床に着く/チリ/暗闇の中、目の瞳の光の黒の紫に変わっていく。きれいに。チリチリチ。ああ、上京!何のために上京、した。すでに出歩く人もいない頃なので、何か犬か幻か人かが柵を過ぎたのかもしれない。35歳だが、もう今年で。チリチリ、滑らかにすり抜ける影が段差を、ホースを伝っては、サッシに忍び込む。って、おうい!まてよ少年。チリリリリ…

チュン・チュンと、カーテンを包む光/切ない隙間風に新しい匂いの季節がしみていく。

声のイメージは、がらんどうの胃や、瞳に映った恋しさにただよう。ヴオッと垂れの冷えをかむと声はもうしなかった。犬は布団を被り直し、僕の眠る姿に沈んでいった。

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