「不思議の国のアリス」に尽いて 〜児玉あゆみ・覚書〜 /服部 剛
 

み」という世に唯一無二の詩人そのものである。
 偽りに覆われた街の中で密かに呟く(私と息を止めれ
ますか)という問いかけは、愛する誰かへの言葉である
と同時に、彼女の詩を読む(聞く)全ての人への問いか
けである。その「生と死」の狭間に、本当の何かを探求
して歩み続けるのが、児玉あゆみという詩人の本質だと
思う。

 この詩の中盤で、そのまま家には帰らず途中でBar
に立ち寄り、カウンターで独りグラスを傾けながら物思
いに耽る詩人の姿を想像するのだが、詩人という人種は、
「人といる時」と「独りでいる時」と二重の顔を持って
いるものだと思う。児玉さんもおそらくは、日常
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