スワロフスキーの夜/エスエル1200
 
「まずは君に足りないものを補ってあげるよ。」と土星人が言ったが
「僕はこのままでいいよ。」と断りを入れ、スプーンでカップの縁のパイを崩した。
「せっかくだけど。」
だってこの“何かもの足りない”のが僕なわけだし、もしも補うべきものがあるとするならばそれは自分自身で見出すつもりだ。
それに、そんな大きな輪っかを頭に乗せていたら恥かしくって街を歩けないじゃないか。
そう思ったけれど言葉には出さず、少し濁った琥珀色のスープを口に運んだ。
「そんなだから貴方、あのこのスターマンになれないのよ、ねえ。」
と金星人のご婦人が口元を真っ白いハンケチで拭いながら土星人に同意を促すと、彼は大きく頷いた
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