涙ノ星/服部 剛
ひとしずくの涙を
顕微鏡で覗けば
そこは内包された
ひとつの宇宙であり
やがて夜も更ける空に
ひとつ、ふたつ・・・
星々は灯り始める
あれはきっと
時々寒さに震えながらも
こらえて地上に立っている
僕等一人ひとりの物語を映す
空の鏡だ
オリオンからシリウスへ
シリウスからもうひとつの星へ
冬の大三角形を結ぶ糸が
一人ひとりの星々を
無数に結び始める
やがて冬の大三角形も消え
白みゆく空に
大切なひとの顔が
浮かんで来る
懐かしそうに
こちらをみつめる瞳と
頬に流れ落ちる
ひとしずくの涙
一瞬光り
そのひとの顔は
夜明けの空に
消えた
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