背後の声 /服部 剛
上司の言葉に傷ついた先輩が
辞表を出そうとしていたことを
打ち明けられて
床に広げた模造紙に
クリスマスツリーの絵を描きながら僕が
見上げた先輩の背後にぼんやり浮かぶ
十字架にかけられた人が
「世界の誰もがあなたを理解しなくても
私だけはあなたの気持を知っている・・・
今迄本当によくがんばってきたことを・・・」
沈黙の声を聴いた僕も
「先輩がいてくれるのも、
何か意味があるからかもしれません」
先輩の目が少し潤んで
十字架にかけられた人の
姿が消えた
戻る 編 削 Point(1)