余白ノ顔 /服部 剛
 
手にした「水版画」という本を開き
(うた)という詩の行間で 
夕暮れのすすき野原に立つ彼 

今は亡き女の風の面影に 
いつまでも手をふり 

すすき等もまた 
金色の海の波間に 
うたいながら 
身を揺らし 

本の頁捲(めく)った
詩のあとの余白に 
面長の女の顔の輪郭で 
垂れていた
白い紐の栞(しおり) 

目鼻の無い頬を落ちる 
いくつもの涙の滴 
滲んで消えた 




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