正午の太陽 〜ベランダの夢〜 /服部 剛
思えば今迄数えきれぬほど
脱いでは洗い
洗っては干し
畳んで仕舞う
引き出しから取り出しては
毎朝少々気分を変えて
鏡の前で服を着る
昇っては沈む
太陽の数ほどに
日々物干し竿に並んで干される洗濯物等の
普遍の沈黙
いつまでたっても
汚れては、洗われる、人間の僕も
夜、布団に入ってから
朝、目覚める迄の間に
忘れ得ぬ、不思議な正午の夢を見る
見晴らしのいいベランダで
一枚の白い衣服になった僕が
家族や友の顔を浮かべた色とりどりの衣服と並び
時折風に揺られる物干し竿の下
ぶら下がっている
パノラマの空に輝く
正午の太陽
薄っぺらな全身に、幸福を浴びている。
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