酒場の警笛/服部 剛
 
夕暮れの彼の部屋に
掛けられた一枚の絵  
額縁の下に書かれた題字は
「夜の酒場」 

カウンターに頬杖をつく 
朧(おぼろ)な人々の面影は時折  
傾けた空のグラスの氷を鳴らす 

小さい舞台の暗がりに 
置かれた椅子は 
一つの照明(ライト)に照らされて 
BluesManは腰かける 

彼の部屋の壁に掛けられた 
額縁の中の夜から 
吹き鳴らされるトランペットの警笛  

彼の部屋の窓際に 
干されたまま
夕陽を浴びた洗濯物等は 
カウンターにならぶ酔いどれ人等の面影で 
BluesManの吹き鳴らす 
音の無いメロディーに 
一瞬、揃って 
湿りがちな、身を揺らす。 







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