365分の一日/猫のひたい撫でるたま子
そうなものはなに?
あなたが、あなたという記憶が埋葬され、土に還ったころ
私の大地は水を浴びて根を生やしていく
それが柔らかく日に透けて見える葉になり、また陽射しを浴び
そのうちに雫をしたたえる枝になり、八つの方角に伸びてゆくだろう
そうして枝はしな垂れ、葉をゆらしては微かに聴こえる音を鳴らし
行き交う人の視線に晒されてゆくだろう
私は女ではなくなって、あなたもあなたというただの人に孵って
私たちはやっと言葉を交わすでしょう
触れることよりも、遠くからあなたを見渡せる距離で見つめられたとき
私は初めてあなたを愛したと、伝えてよいのではないかと
そんな私の独り言を聞いて、あなたは答えてくれるでしょうか?
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