365分の一日/猫のひたい撫でるたま子
365日分の一日だけ悲しみに浸って
それ以外は悲しみをひた隠して生きているあなた
私という女がいて、それはあなたに会ってから女になった
私は以前、ただの私であった
私を取り巻くものは全てが私の選択であった
365日分の一日だけ抱える感情
あとは忘れてしまうから、その日だけは鮮明にしておいて
あなたという人がいて、それは私にとって男であった
あなたは以前、一人の男であった
あなたという人、あなたの指先、あなたの視線
あなただけがこの世の男であった
私の中から消えてしまいそうなものはなに?
私を消してしまいそう
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