樹木の人/
服部 剛
駅の構内で
四つん這いの子供が
夢の荷物を積んだミニチュアの
貨物列車を走らせ
ぴょん
と飛びついて捕まえる
小さい掌から夢を放って
自ら夢に腕を伸ばす
大人はいつから
両腕を失うのだろう
都会には今日も
腕の無い無数の人々が
靴音ばかりを響かせる
群衆に紛れて立つ
幻の樹木の人はもう一度
目に映る日常を塗り替えようと
枝の両腕を広げている
群衆に
溺れることなく
根を張って
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