文で人に喜んでもらう/K.SATO
理性だと言う口は閉じているが、書いた文が多くの人の笑顔になる光景をうっすらと水で描いている。原稿を取った人の口元に微笑みを得るには指先のコントロールがいり、キーを押す目玉への問いかけの繰り返しが常だ。小さな子が動作と尻餅の繰り返しによってひとつひとつの運動や言語、音階などを獲得していく様子に似ている。また、発語を汲み取って出す行為の継続には幾らかの小銭が必要になる。歩数を増やすのに何枚かのコイン、数枚の紙幣をポケットの隅っこやリュックの網袋に膨らませておくように。進むには常に買い込めるだけの食料が必要なのだろう。今日も棚から出したフライパンに、切り刻んだニンジンやピーマンの類を跳ね上げてはコンロに
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