軽蔑/鈴木
 
 賞味期限を過ぎた牛肉の
 醤油と塩胡椒を縫って口を浸す腐臭や
 運動会のリレーにて根拠もなく裸足で走る際に砂利を踏んだ痛みに
 蔑み、は似ていて
 じきに平気な顔を作れるようになるものだけれど
 ゲル状に溶けたレアステーキを蝿の羽音を聞きながら食べたことも
 筋に突き刺さり血液の川を作るほどの角を持つ石の上で走ったことも
 ない

 鈴虫の鳴く夜に黄金色に輝く月を捉える視界の隅で嘲笑が瞬き
 それは枝垂れ柳で、蔑んでいた
 無人の教室にて一人で勉強していると急に机どもや黒板がどっと騒ぎ
 見渡せば止むものの蔑んでいた
 慣れた
 饐えた甘みは身体に満ち満ちて残る

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