祖母の見舞い /服部 剛
「この病室は、眺めがいいねぇ・・・」
ガラス越し
輝く太陽の下に広がる
パノラマの海
ベッドの上で点滴に繋がれて
胸の痛みに悶えながら
なんとか作り笑いをする祖母をよそに
目の前の海はあまりに
穏やかな凪ぎで
滑らかな波のまにまに
無数の光の宝石は踊る
ベッド脇の椅子に腰かけた僕は
しばらく握っていた祖母の手を離し
床に置いたリュックから取り出した
詩集の原稿を手に
たった一人の為の朗読会を始めた
「
あなたは今
無人の映画館にいます
やがてスクリーンに映る
詩の物語は始まり
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