文化祭がしたい。/仲本いすら
 
僕らの未来に、花束が添えられていた。
 下校時刻はとうに過ぎているけれど、まだ帰りたくはなくて
 意味もなく美術室に篭りエッシャーの画集を読み漁っていた
 ビビットカラーをこぼした床では死んだはずの先輩がすでに
 樹木みたいな根を張っていてああもう僕は逃げられないんだ
上履きのかかとを踏んでいた。
 それと一緒に、明日の影も踏んでいたかもしれない。
 窓ガラスを割り歩いた青春なんてないし
 なにかに熱中した生活ってわけでもなかったけど
 黒板に書かれた文字を見るたびに
 鼻の奥をすっぱいものが通る
 ああ、文化祭がしたい。
 世界が終わってしまう前に、
 文化祭がしたい。
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