物語詩「塔と鳥とクレヨン」-first wing-/青の詩人
 
びたいと
窓ばかり見ていた

じゃあ出て行けよと言うと
急にそっぽ向いたので
塔の外に丸ごと放り投げることには
まだおびえているようだった

神様の匂いを嗅ぎに行こうと提案したら
クレヨンをつついたから
アモールに少しの空を混ぜて描いた
白はもう見つからなかった

パンとぶどう酒と本を一冊鞄に詰め
地図と双眼鏡とナイフを腰につけ
父から受け継いだ鳥帽子をかぶり
母が編んだセーターを羽織り

クレオール5日目の早朝に
塔を後にした

ドアから出るのは面倒だったので
こころを肩に乗せて飛び降りた

そこで
ふわっと
世界が止まった

下を見ると
霧がたちこめていて
何も見えなかった
だから
何もなかった

肩を見ると
羽だけくっついていて
僕が鳥になっていた

アモールと空のクレヨンで
鳥になれることを知った

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