剥ぐ者/影山影司
 
行く当ても無く「フォンブラウン」ボタンを押して、上に上る上昇感を感じる。(もちろんそれは主観であって、本当に上なのか下なのかそもそも何を基準に上と下が定められているのかも分からない)
 透明チューブの中に収められた筒状の小部屋が、無音のままに上昇する。居住区画などは敷居が差し込まれているが、農地区画や工業区画はクリアに見渡せた。バイオテクノロジィとナノテクノロジィは大抵のことを可能にしてしまった。
 一瞬のうちに下方へ消え去る生産的建築的風景をコマ送りに見せられると、なるほど「まだ大丈夫だ」という気分にならないのでもない。
 だが、世界は崩壊してしまったのだ。確実に。ここの住人達はこの建造物
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