昨日は孤独な世界?/錯春
 
驚愕が飽和した視点について。



常にマスクをしている少女がいる。彼女は、カサついた頬を風にあおられながら、息を殺して川辺の茅の中に紛れている。
はじめは花粉症だった、が、気付けばもう長いことマスクをつけている。彼女が通う絵画塾のクラスメイト逹に、彼女のことを尋ねれば、「ああ、あのマスクの」と相づちを打たれるくらいに長く。
彼女の名前はキヌホ。
彼女は、口元に、言い表しがたいコンプレックスを持っていた。
骨の一部を露出して、粘膜をべろんと突き出せる場所なんて、他を探しても見当たらない。

(気味悪い。なんで皆へーきな顔してグロスや口紅を塗りたくれるん?なんで、粘膜をイビツにす
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