火曜日の水死体/詩集ただよう
その夜から、朝にかけてのことである、京浜島の壁に打ち着けられた水死体は美しく皮膚がやぶれ、懐中電灯に照らされた顔面からダークな海中へ、ヒラヒラと赤い固まりがはがれていった。
早朝のことである、ビリジアンの絵の具を口に含んだ一瞬に、その味をみていた。歯磨き粉とアクリルガッシュのチューブは似ていない。
前の深夜のことである、ロードバイクから外れたチェーンに転んだ人物は頬と肩と肘とバッグとに強い擦り傷を負った。車の少ない反対車線ではクラクションが鳴らされていた。人物は歩道の縁にぐらつき座り込んだ。
夜更け前その日は雨上がりに人が増えた。サークルKに入るまでの近隣の様子、ショルダーバッグの位置をかえる若い女性、傘を提げている。
こめかみを押さえる頃、57kgの重量の水死体の青年は流れる頬を消毒し、百円ライターを洗面所に落とした。
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