盲目の鬼ごっこ/見崎 光
 
“鬼さん、こちら”
“手の鳴る方へ”


駆け寄っては消える音
遠くで掌が誘うも
先には闇でもなく光でもない
果てない草原のような
落ち着かない風景が広がっている

触れた一瞬の感覚は
確かに手の鳴る方に在り
気のせいで掻き消された感覚もまた
其処に在ったように思える


見えているはずの視界には音だけが茂り
肝心な掌は映らない
いつまで経っても鬼のまま
日付を何度見送っただろうか


瞳のない目から涙は零れないのだと
心情は逸れ無の空間が続く間も
どこかで手が
鳴っている


遠く遠くで呼んでいる

“鬼さん、こちら”
“手の鳴る方へ”
アナタは何処




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