盲目の鬼ごっこ/見崎 光
“鬼さん、こちら”
“手の鳴る方へ”
駆け寄っては消える音
遠くで掌が誘うも
先には闇でもなく光でもない
果てない草原のような
落ち着かない風景が広がっている
触れた一瞬の感覚は
確かに手の鳴る方に在り
気のせいで掻き消された感覚もまた
其処に在ったように思える
見えているはずの視界には音だけが茂り
肝心な掌は映らない
いつまで経っても鬼のまま
日付を何度見送っただろうか
瞳のない目から涙は零れないのだと
心情は逸れ無の空間が続く間も
どこかで手が
鳴っている
遠く遠くで呼んでいる
“鬼さん、こちら”
“手の鳴る方へ”
アナタは何処
戻る 編 削 Point(2)