道の真ん中の悲しみ/なかがわひろか
 
道を歩いていると
悲しみが落ちていた
僕はそれを拾うのが嫌だったから
見て見ぬ振りをした

それでも悲しみは
そんな僕に着いてきた
振り払おうと必死で走ったけれど
どうやら僕は悲しみに気に入られてしまったようだ

僕と悲しみは一緒に暮らし始めた
悲しみの朝は早かった
僕が起きると毎朝食卓に
おいしそうな朝食が並んでいた

悲しみは家のことを全部やってくれた
料理も洗濯も掃除も
どれもとても丁寧にこなしてくれた
時には僕とセックスもしてくれた

やがて僕と悲しみの間に
赤ちゃんができた
僕たちは毎日悲しみのお腹の赤ちゃん
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