道の真ん中の悲しみ/なかがわひろか
道を歩いていると
悲しみが落ちていた
僕はそれを拾うのが嫌だったから
見て見ぬ振りをした
それでも悲しみは
そんな僕に着いてきた
振り払おうと必死で走ったけれど
どうやら僕は悲しみに気に入られてしまったようだ
僕と悲しみは一緒に暮らし始めた
悲しみの朝は早かった
僕が起きると毎朝食卓に
おいしそうな朝食が並んでいた
悲しみは家のことを全部やってくれた
料理も洗濯も掃除も
どれもとても丁寧にこなしてくれた
時には僕とセックスもしてくれた
やがて僕と悲しみの間に
赤ちゃんができた
僕たちは毎日悲しみのお腹の赤ちゃん
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)