あの穴の中を覗いた/猫のひたい撫でるたま子
あの穴の中を覗いた
そこに所定の置石があったなら私は私の宝石を置かないし
誰もいない部屋の椅子に座ったところで5分も持たない
天井が高い場所、椅子に座った数十秒
天窓を見上げて
一言の声をあげて
しんとした空間を乱した
誰にも見られていない
意識が固まる16℃
誰もこない
押し出された記憶容量から
感情が薄く延びてミルフィーユの層を作る
切れた断面から零れ落ちるものがある
それを親指の爪に乗せて舐めたら
分からなくなってしまった私の世界
背中を反らせて、うなだれて徐々になくなってゆく或る私が
背中に手をかざす
これでいいのかと
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