恋愛詩の教科書として読む『黒田三郎詩集』/イダヅカマコト
たのである
もんどりうって
死にもしないで
一体だれが僕を起こしてくれたのか
少女よ
そのとき
あなたがささやいたのだ
失うものを
私があなたに差上げると}
恋人=結婚相手が出てくるのは最後の1連だけです。ささやくだけ。
そして残りの5連は詩の書き手が、たまたま生きてきたということを書いています。
でも、第5連の少女はどこに呼びかけているのでしょうか。
第4連までを見たら「運命」ですが、第6連を見たら「恋人」に見えます。
「失うものを私があなたに差上げる」というありえない言葉を呼び寄せるために、
黒田は運命=少女=恋人という等式が成り立つような論理の
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