昨日は孤独な世界?/錯春
ンチ伸びていく(でも手入れはしている)髪の毛。
偶然にも、彼女の髪の毛は美しく、柔らかく、そして羨望の的にさえなった。
しかし、それも一番最初は彼女の母親の「女の子なんだから」のエゴから始まったことであることを、彼女は知らない。
それは幸いである(彼女は髪にアイデンティティを感じているから)
幸いである(彼女は今しか考えられない、だから今伸ばされている髪がいつのしか陰毛のように縮れて抜けていくことなんて想像しない)
幸いだ(彼女は母子家庭で育ち、田舎を知らなかったので、故に老人を見たことがなかった)
自分の範疇を越えるものを見たことがなかった。
そしてクリーム色の浴室でぼんやりと
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