return/依
空を見てる
いつもより幾分柔らかい眼で
オレンジ色の空を見ている
幸せで、悲しくて
涙を落としたくなるような心持ちで
夕焼けを眺めている
例えば
このまま空に融ける
そんな夢にまどろんでみる
血も肉も骨も
「私」などと呼ばれる以前の物質に戻り
海に戻り
水に戻り
ただの熱量に戻り
素粒子に戻り
神様の細胞に戻る
今度は優しい世界をつくれますようにって
そんな声を聞きながら
粒よりも小さくなっていって―――
なんて幸せな結末
いつのまにか夕闇
ギターの音が聴こえる
人を撃った歌を歌っている
「私」という重たい物質が
浅い夢からもうすぐ目覚める
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