透明人間/皆月 零胤
 
優しい光が降り注ぐ
穏やかに晴れた休日の午後は
微風に吹かれながら
静かに死にたいと思う

毎日が死に続けていて
こころはこんなにも穢れているのに
姿は透明のままで誰の瞳にも映らない

優しさはそんなこころにも届くけど
差し伸べてくれる手を
ボクは握り返さないだろう

このままビルの隙間に落ちたところで
死体さえ見つからないだろう

誰もが平等に姿の見えない暗闇の世界で
息を吸って言葉を吐いているけど
はじめから死体だったような気がする

見えないボクは見える文字になって
哀しい顔で幸せなフリをしてみたりするけど
そんな気持ちが見える人にわかるものか

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