屍の私/大木円盤
 
問題に答えると
答えから問題が生まれる

右ですか?左ですか?

右へ進んでみれば左が
正解のように思えるし
仮に右が正解であり
正解を歩んでゆく自分が
生まれれば どこからか
別の自分がその選択を
冷ややかな目で
見ているのだ

幾度か
選択の正解と思しき
世界の想像を試みる

あたかも尊い聖者のような
面構えで至福の時を食し
多くの民に祝福されている
私の雛形

私を取り巻く世界の臭気に
違和感を覚える

においがないのだ
味がないのだ
温度がないのだ

正解の無い世界に
翻弄されつつも
尚も生きながらえる
屍の私
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