初恋の記憶/りゅうのあくび
恋が恋とはわからずに
そう初恋と云う言葉
さえも知らなかった
少年の頃の焦がれる記憶は
小さな翼が
羽ばたいていく
軌跡のような
鳥たちの
とても切ない
ぬくもりみたいに
少女の小さな手のひらと
白い太陽のきらきらとした陽射しだけが
まなざしの奥では
微熱となって残っている
少女が佇む
大地に映る日時計だけが
時を知らせる
休日の誰もいない時刻に
透きとおった秘密の青空は
誰のものでもなく
大人になることができて初めて
ようやく初恋の謎が
少しずつ解けてゆく
道端に鮮やかに咲く
コスモスの小さな花畑で
夜空に羽根を広げるモンシロチョウは
在りし日の
初恋の儚さを教えてくれる
はらりはらりと
藍色の秋風に揺れながら
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