幽霊/天野茂典
狐のかみそりが赤く咲いていた
藪のある舗装道路だった
ぼくが轢いたのは蛇だった
チュ−ブのようないきものだった
前輪でごつん 後輪でごつん
ぼくのバイクは二度いきものを
轢いたのだ 避けようがなかった
奴は 道の真中をうねうね這っていたのだった
ぼくもスタンディングでよそみをしていたから
発見が遅れたのだ タイヤの下のいきものは
機械の感触とちがっていた ぼくは
腰がひけた とても気分が悪かった
これまでいきものを轢いたことはなかった
おなじ生物が機械で死を強要されるのだ
許せることでは
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