3/カフカ
 
曇った窓の外からクラクションの音が幾重にも重なって聞こえる
後方にいる車のライトが車内に差し込み運転手の顔を照らした
おでこに大きなホクロのある人の良さそうな顔立ちをしていた
「お客さん〜、今日は暑いですね、こう暑かったら仕事なんてやってらんねーや、お客さんこの辺でちょっくら休憩しませんか?、近くにある安くて上手い酒が飲める居酒屋を知ってるんですよ、どうですか?、私は仕事帰りにあの居酒屋によって飲む酒が一番好きなんですよ、え?帰りはどうするかって?そりゃもちろんこのオンボロタクシーですよ、いや私はこの仕事をもう20年もやっているんで目を瞑っていたって運転できますよ」
運転手の息は酒臭かった
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