泣いていいよ /服部 剛
母親に抱かれた赤児は
空に響き渡らんばかりの声をあげ
全身で泣いている
泣くことは、生きること。
だというように
ほんとうは大人になっても、
黙ったふりで、泣いている。
決して口にはしないだけ
決して顔には出さぬだけ
世界中の大人といわれる人々が
今日もいろんな場所で
ぴーちくぱーちくやっていて
御多分もれずこの僕も
ぴーちくぱーちくやっていて
もしも空から眺めたら
みんなちっちゃい子供に
見えるでしょう
時には僕もあなたも
赤児だったあの頃みたいに
まことの親が隠れてる
空に向かって
全身震わせ泣けばいい
もう涙も出ないほど
泣いて空っぽになった後
ふいに笑顔が出るように
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