アリとキリギリス/皆月 零胤
 
昔々
あるところに
お爺さんとお婆さんが住んでいました
お爺さんは山で光る竹に見とれるばかりで
芝刈りはしていなかった
お婆さんは川で流れる桃を見送るだけで
洗濯はしていなかった
そんな日に
浦島太郎は
浦島太郎として生まれ
浦島太郎として生き
子供の頃から遊んでばかりいたが
金太郎は熊を倒した

結局鬼が倒されることはなかった
ウサギはタヌキを泥舟で沈めることもなく
カメに抜かれることもなかった
カメは子供にもいじめられ
龍宮城にも連れて行かされた
浦島太郎と深海に沈み続ける
きこりは川で斧を沈め続ける
人魚は歌で船を沈め続ける
いじめっ子が土管の上で
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