爆裂(上、前)/鈴木
 
てうわごとを発し始めた。要するに退屈した。部屋と彼を映してテレビは黙っている。なんとなくスイッチを付ける気にはならない。閉じたカーテンの隙間から彼はその日はじめて外を見た。雪が降っていた。身を起こし窓辺に駆け寄るとベランダの手摺も他棟の屋根もマンション広場もその中央に立つ楓も一様に白く染まっている。弾丸となって玄関より発射した彼はあせるばかり階段から二度も滑り臀部を強打するがものともせず地上へと辿り着いた。見慣れたはずの通路と車道が日常に飽き眠ってしまったかのようであった。妖雲へかざした手に牡丹雪は降り、火照った肌の上を澄み行きながら伝った。吐息が消えていくのが惜しく深呼吸すれば肺の冷却が心地よか
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