変身/りゅうのあくび
 
ゆらりとそよいだ
黒髪は
涼しい黄昏に
やや雑駁な面持ちで
暗がりの多くなった細い
路地の景色を
夕陽と連れ添うようにして
揺らいでいる
ひんやりとした西方にある
最果ての夜空より
永い影が届く

 *

人通りの集まる場所に
面した通りに
ふいに隠れた
路地に気がついて
倉庫を店舗へと
改修した工房のような
古びた理髪店を見つける

 *

丁寧に磨かれた
透きとおった鏡の前にある
黒い椅子に座って
アクリルでできた
白いマントを
着ることになると
頭蓋の上からは
鼓動のような微かな音が
響いている
まなざしを反らせた後に
ふと
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