泥酔する三半規管/皆月 零胤
吸いかけのタバコを灰皿に残したまま
別のタバコに火を点けてしまう
もう何杯目かは
忘れた
三半規管がサボりだして
その加速が止められないまま
もう上手く歩けるような気がしない
別に酔っていなくたって
僕というこの人生を
上手く歩いている訳でもない
歩けぬことに変わりがないなら
こうして酔っていたほうがいい
今、優しい言葉を
掛けられたら
僕はきっと泣いてしまう
賭けてもいい
グルグルと三半規管のように回る
この世界で
こころのバランスまでも失って
今、僕は
騙されたほうがまだマシなぐらい
孤独だ
失うものなんかもう
何もない
そう思ってしまう夜に
失えるものがまだ
たくさんあることを
ただ
誰かに優しく教えてもらいたかった
戻る 編 削 Point(9)