泥酔する三半規管/皆月 零胤
 
吸いかけのタバコを灰皿に残したまま
別のタバコに火を点けてしまう
もう何杯目かは
忘れた
三半規管がサボりだして
その加速が止められないまま
もう上手く歩けるような気がしない

別に酔っていなくたって
僕というこの人生を
上手く歩いている訳でもない
歩けぬことに変わりがないなら
こうして酔っていたほうがいい

今、優しい言葉を
掛けられたら
僕はきっと泣いてしまう
賭けてもいい

グルグルと三半規管のように回る
この世界で
こころのバランスまでも失って
今、僕は
騙されたほうがまだマシなぐらい
孤独だ

失うものなんかもう
何もない
そう思ってしまう夜に
失えるものがまだ
たくさんあることを
ただ
誰かに優しく教えてもらいたかった
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