少女/青井 茜
見知らぬ少女
素敵に涙を流して
「私を愛して」
と叫ぶ
激しい雨の中
冷静過ぎる頭が
鼓動の数を数えている
早くなる朝が
ゆっくりと通り過ぎる夜を見送って
そうしながら止まない雲を見上げるばかり
悩み事は
少女の叫ぶ愛よりも
幾重にも重なった想い出の方が重いこと
ちらちらと
少女が目配せをした
苦くない薬の効き目が弱いような
そんな生易しい手の温かみが
少女の涙を拭うことはなく
ようやく止みそうな雨をよそに
心臓はだんだんと赤くなっていく
初めて知ったのは
少女の背中を見つめる機会
見覚えのある少女が涙を流す理由を
名前を探し出した頃に考える
そして
少女からの
「私を愛して」
という叫びは聞こえなくなった
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