『お』/フクロネヅミ
成長期のはじまり、
おっぱいの お は おんなの子のものだった
ゆるやかにカーブがかった
右上がりの
短くも純粋な時間
いつだって
おんなの子のはにかむ口角に似ている
思春期のはじまり、
おっぱいの お は おとこの子そのものだった
ずっとおんなの子の
足や、かたや、それから
ボタンがふたつはずれた
シャツのスキマが
夜になれば
悩みにも似た興奮になってしまうから
からだを少しまるめて
からまる先をもとめるような
そんな形状に変わってしまう
おとなのはじまり、
おっぱいの お は おとことおんなに似はじめていた
未来をつつみこむような
腕を、母性を
少しずつ覚えはじめたばかりか
ときどき、ちいさくなりすぎたり
おおきくかまえすぎたり
まるで無器用な愛そのもの
やさしくするたび、美しくなろうとする
そして、おっぱいの お に
ちいさな命が宿り
かわいい やや の ものになった
戻る 編 削 Point(3)