世間の捉え方/岡部淳太郎
 
染まって自分をなくしていた方が気楽であり、それこそがうまく世の中を渡っていくための処世術だと思っているような節があります。そして、そうした世間の価値観に同調しない者を場の空気を乱す者として嫌います。いっぽうの個人の方は、世間の価値をある程度認めつつもそれだけでは足りないものを感じています。それが何であるのか考えるためには、世間の暗黙の諒解の空気の中にいては駄目であるということをよくわかっています。だからこそ、個人はあえて世間から距離を置こうとします。その距離がそのまま世間と個人との間の溝になっているのです。
 さて、個人は世間から離れて何かを考えます。世間から離れるということは、考えるという行為
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