えいえんとしてのラリー/灯兎
海辺のテニスコートまで歩いていくと
忘れられた言葉たちが孤独なラリーをしていて
ボールを打つたびに会話をしていた
僕たちは細かく絶望的に分たれた世界の層の間にいるんだ
ここでは漂着する場所さえ選び取ることができないんだね
そうだよ。だから僕らはここで結晶化を待っている
たまに忘れそうになるよ
あゞごらん
何だい?
白磁体の雪片がセンターラインに落ちていく
嗚呼とても悲しいね
何処にも行きつかないけれど
何処かからは発車してしまった
時刻表に載らない貨物列車のような会話
黄緑のボールが弾むたびに
彼らの濁点と句読点もひらひら揺れている
夕焼けが彼らのシルエットを映しだすと
堆積した時間が 少しずつ結晶化しているのが見えて
それを教えてやるべきか迷ったけれど
止めて はっか煙草に火をつけた
この灰のように 結晶化した時間はすぐに零れおちるものだから
きっと彼らは汗まみれの接続詞が結晶化するまで
ラリーを続けることになるだろう
それでいいと 今は思う
戻る 編 削 Point(4)