えいえんとしてのラリー/灯兎
 
海辺のテニスコートまで歩いていくと
忘れられた言葉たちが孤独なラリーをしていて
ボールを打つたびに会話をしていた

僕たちは細かく絶望的に分たれた世界の層の間にいるんだ

ここでは漂着する場所さえ選び取ることができないんだね

そうだよ。だから僕らはここで結晶化を待っている

たまに忘れそうになるよ

あゞごらん

何だい?

白磁体の雪片がセンターラインに落ちていく

嗚呼とても悲しいね

何処にも行きつかないけれど
何処かからは発車してしまった
時刻表に載らない貨物列車のような会話
黄緑のボールが弾むたびに
彼らの濁点と句読点もひらひら揺れている

夕焼けが彼らのシルエットを映しだすと
堆積した時間が 少しずつ結晶化しているのが見えて
それを教えてやるべきか迷ったけれど
止めて はっか煙草に火をつけた

この灰のように 結晶化した時間はすぐに零れおちるものだから
きっと彼らは汗まみれの接続詞が結晶化するまで
ラリーを続けることになるだろう
それでいいと 今は思う

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