Degital Evil Saga-Antena-/影山影司
 
る。


 髪は全て白くなった。歯も全て抜け落ちた。一段一段這いずるように上り詰めた塔の頂上はやけにだだっ広い所だった。友人の干し肉を奥歯の上で転がして、皮と腸で作った水筒に貯めた血液で一息に飲み下した。

 頂上には神が居て俺は理由もなく殺さねばならなかった。
 俺の背筋は既に曲がっていたが、外套はガチガチに固まっていて、手入れの行き届いた銃器は、存分に吠えた。


 それからしばらくの事は憶えていない。
 引き千切ったように壊れた神が死んでいた。
 神の体からだくだくと流れ出した血だまりに門扉を浮かべると、音を立てて俺はその向こうへと吸い込まれた。
 気がつくと辺りは真っ黒の木々に覆われた森。
 塔も階段も煉瓦の影形も、見あたらない。
 腹が減ったと呟くと、狼の遠吠えがきこえる。
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