踊り場/台所/皆月 零胤
 
西日が射す
階段の踊り場から
子供の声がする
懐かしい声が
あれは
ボクの声だ

 ボクがそこに座り
 マンガの本を読んでいると
 台所のほうから
 タンタンタンとリズムよく
 聴こえてくる包丁の音

 いい匂いがする
 もうすぐ
 ボクの名前が呼ばれるはずだ

かつて
西日が射した
階段の踊り場から
子供の声がする
懐かしい声が
あれは
ボクの声だ

 ボクはそこに座り
 待っている
 太陽を失くしてしまった
 冷たい階段の踊り場で

 音も
 匂いもしない
 台所のほうから
 ボクの名前が呼ばれるのを
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