九月/おるふぇ
先生の声は透き通っていた
秋の日の教室
並んだ机と机や椅子と椅子は
整然として静かだった
先生の声は非現実的な未来のように
ただ流れて流れて
僕の右肩をすっと過ぎて行った
あれは九月
確か九月の教室
*
どんなメカニズムなら涙は
宇宙の裏側と混じり合えるだろうか
進歩もなく成長もなく
社会人として僕は
あの頃の未来を生きている
襖の奥に隠しておいたエロ本は
カビ臭くてもう見る気はしない
夢と現実の脈絡はいつもあべこべで
繋がった試しはない
僕らの痛みよ
情熱に変われ
愛すべきこの街で
また生まれ変わろう
憎しみのすべてよ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)