九月/おるふぇ
 
先生の声は透き通っていた
秋の日の教室
並んだ机と机や椅子と椅子は
整然として静かだった
先生の声は非現実的な未来のように
ただ流れて流れて
僕の右肩をすっと過ぎて行った

あれは九月
確か九月の教室





どんなメカニズムなら涙は
宇宙の裏側と混じり合えるだろうか
進歩もなく成長もなく
社会人として僕は
あの頃の未来を生きている

襖の奥に隠しておいたエロ本は
カビ臭くてもう見る気はしない
夢と現実の脈絡はいつもあべこべで
繋がった試しはない

僕らの痛みよ
情熱に変われ
愛すべきこの街で
また生まれ変わろう
憎しみのすべてよ

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