空中庭園/皆月 零胤
 
空中庭園の夜で
零れそうな月が
溶けて朧に霞む
夜は秋みたいに
更けてゆくよね

いつの間にやら
緑が赤に変わり
枝から剥がれて
足元に転がって
粉々に消えても

何も変わらずに
ベンチに座って
空を見ているよ
別に誰を待つと
いう訳でもなく

花びらのように
降る雪もすでに
桜に変わったよ
でもまだボクは
立ち上がれない

逆らい続ける力
それがなかった
なんとも惨めだ
何処へも行けぬ
だからこのまま

空中庭園の夜で
蒼ざめた満月が
零す涙に濡れる
銀雲を運ぶ風は
ボクを運ばない
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