君へ/大木円盤
それは
湯に浮く垢のようにも見える
やさしく両手で包みこみ
素早くすくい上げれば
強烈な表面張力によって拡散し
くみ上げる事ができない
押す難しさ
引く難しさ
複雑に仕込まれた間合いを
共時的に図らなければ
決して生まれることの無い
永遠の均衡が
そこに有る
そのアンバランスな均衡を
一旦踏み外したのならば
君は思わぬ真実の目撃者となり
後戻りできぬ現実に
驚愕する
そこには言い訳のきかぬ世界が
広がっている
無意識に拡大する自己相似性に支配された
禁断の世界が君を呑み込んでゆく
自我領域の崩壊を感じながら
その世界を見つめることしかできぬ
哀れな君はやがて
眼下に展開する
再分散化された幾つもの現実の中で
消滅する
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