リラ/小さな庭から/北野つづみ
 
根は分解されて土に還っていた
枝の先にわずかに最期の吐息が残っていた
去年咲かせた花の種を形見に取っておくんだった
オー マイ リッラ 
後悔はいつだって遅刻する

ぽっかりと丸い穴が空席を知らせる
風景の欠損に 道行く人は気づくだろうか
自分に忙しく
誰もが眼を伏せ足早に歩いていく 
この街のなかで?

変わっていくことを悲しまない
変わってしまったことを知らないことも
知られないことも

空席の上は青空だ
土からは古くて新しいにおいがする
リラが名前をかえ 来年も白い花を咲かせる


2008.9.24

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