こぼれて/見崎 光
 
てゆく呼吸
日々「昨日」が摘まれ
満潮の小波に攫われてゆくのだと
どこかで小さな声がする


楽しむだけの過去なら
零す記憶に過ぎないけれど
懐かしむ過去では
浸る記憶が好ましい
振り返るだけの過去なら
触れる記憶に過ぎないけれど
絆される過去では
滴る記憶が好ましい


移りを受け入れてゆかなければ
背負えない過去さえあるという
「昨日」を見送るために
月は欠け
「明日」を迎えるために
月は満ち
こぼれた記憶を
寄せ返す波が摘んでゆく


摂理の中を尊さが
強く
弱く
太く
細く
流れている






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