「兎」/菊尾
 
かけられるとは。誰かに話したら本気で心配されそうだ。
な、なんですか?若干怯え始めた僕の声は口に出していたらきっと震えていたことだろう。
しかし今現在僕は念話というものに興じていて、それは大変便利なもので声に出さずとも思っただけで相手に伝わる。
第三者的に見れば今のこの状況は不審な男が飼育小屋の前で立ち尽くしている図になるのだろう。

「え、あのなんですか?」
「えぇ。単刀直入に申しますとアヒルのガーコの事なんです。」

アヒルのガーコ。奥を見やるとうずくまって眠っているアヒルの姿があった。
「私、あのガーコと共同で暮らしておりまして。まぁあなた方の世界で言うルーム
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